クリスマスカード
大きなプレゼンを終え事務所へと帰る途中、ふいに笹野さんが車を止めるように言った。
夕暮れの駅前通りの雑貨店。
『クリスマスカード』
クールで、行動力があって、我が社で成績No.1で、僕の上司でもある彼女が、ショーウィンドー越しに見える店内でカードを選んでいる姿が僕にはとても意外だった。
『お待たせ。何?きょとんとした顔して。』
僕は何でも無かった顔して車を発進させた。
『あ、クリスマスカードなんて、私らしくないって思ってるんでしょ?』
慌てて首を振ったがバレバレだ。
『毎年お世話になった人やなかなか会えない友達に出すのよ。気の利いた一言を添えてね』
悪いが男顔負けの勢いで働く彼女しか見たことのない僕としては、そんな女の子っぽい笹野さんなんて絶対想像できなかった。が、そんなこと勿論口には出せない。
『クリスマスプレゼントやケーキやホテルのディナーなんかの盛り上がりに比べればカードは地味かもね。日本には年賀状もあるし…』
そう言いながら一枚を僕に手渡す。
『君だって一人ぐらいは出す相手いるでしょ? 使って。』
まったく…読めないヒトだ。キャリアウーマンのくせして運転免許持ってないし、頑固なくせして可愛らしいことをする。
早く一人前になって見返してやんなきゃな。そう思いながら、実は頭の隅っこではもう、このカードを誰に出すのかを決めていた。問題は気の利いた一言だ。どんな台詞がいいだろ?
ラッシュ時の国道は、まるで僕の気持ちのようにのろのろと動いては止まるの繰り返し。
でも勘のいい笹野さんのことだから、そのあたりもすでに見透かしているのかも知れないな。
もらった僕のカードが彼女に届くという事も。