なにもないガーデン
なにもないガーデン。それは僕の部屋から見える隣の家の庭のことだ。芝生は生えているものの、そこには植木らしい植木も、池も、スコップもない。実はどんな人が住んでいるかも知らない。けれども日に何度か猫が通り過ぎていくんだ。
三毛や黒や極端に太ったのや薄汚れた虎猫やらがかわるがわるやって来ては、どこかへ行ってしまう。たいてい猫たちは庭の真ん中あたりで一度立ち止まり、転がったカラの紺色の鉢植えを覗き込み、足早に去っていく。
暇なヤツと笑われそうだけれど、僕は時々2階の窓のそばに椅子を置いて座り、なにもないガーデンと猫たちを眺めている。たいていはお茶とお菓子かなんか用意して、気が向いたらそこでラジオ聞いたり、本を開いたりもする。なにもないガーデンがちょっと寂しくてちょっと気楽なように、僕の毎日も気楽でちょっと寂しげだ。それはきっと猫たちも認めてくれることだろう。
今の世の中、急いで生きることは意外と簡単だ。時代や流行やテレビに乗っかっちゃえばいいんだから。でも休養ってなかなかとれない。自分を見つめるには時間がかかる。たとえ心の中が "なにもないガーデン" だったとしても怖がらずじっくり時間をかけて眺める余裕、または勇気が必要なんだと思う。
空は青い。風は緑の葉を揺らし、猫は忍び足。僕はあくび。