オレンジ編
青い青い空に向けて、ポーンと高く黄色いテニスボールが舞い上がる。海風を受けながら揺れながら、ボールはグローブをかまえる少年に向かって落ちていく。ヒザに砂をつけながらのキャッチ、そして笑顔。
夏にはまだ早い5月の休日の海岸に裸足の兄弟の声が響いている。大人たちは、そんな子どもたちの姿とボールのゆくえを目で追いながら、自らの子どもの頃とシンクロさせていく。小さなお菓子のオマケのことをやけにリアルに思い出したり、家族で祝った何度かのバースデーパーティーの雰囲気がよみがえってきたり・・・。
兄弟は波打ち際に転がったボールを追いかけてバシャバシャと水に足を入れ、やがてボールを拾うという当初の目的をほったらかしにして、くり返す波の上で何度もジャンプをはじめる。沖を進む漁船のせいでひときわ大きな波が打ち寄せてくると彼らは、ますますびしょ濡れになりながら、小猿のように跳ねまくる。
押し寄せる波は、今という時間を、そして大人たちの追想を巻きこんで、白い泡とともに沖へと持ち去っていく。太陽は気づかれないようにそっと少しずつ傾いているようだ。
おだやかな休日の砂浜よ、どうかもう少しこのままで・・・。そう思わずにはいられなくなる。